名探偵・麗尾智美矢五郎の事件簿 ファイル6:コピーキャット稲妻事件の謎

我が家の猫たちの中で一番幼いハナが、麗尾智名探偵に尋ねました。
「今まで解決した事件の中で、一番恐ろしかった事件はにゃんだった?」
「そうだなあ。コピーキャット稲妻事件かなあ」
「すごそうな事件だにゃ!どんな事件だったの?」
そこで、麗尾智名探偵は語り始めました。

麗尾智名探偵は、名探偵と言われるくらいだから、この世の中に恐い物なんか何もない。

・・・というのは建て前で、いくら名探偵でも、そこは猫だから、 恐い物はごくわずかながら存在する。 車での移動、動物病院、注射、薬、シャンプー、ドライヤー、花火、嵐、地震、バキュームカー、 ワンワン吠える犬、 大声で話す知らない人、消臭剤のシューッというスプレー音、 野菜炒めのジュッという音、 追い払っても追い払ってもすり寄ってくる子猫、 その他その他。・・・ って、恐い物だらけじゃないか(汗)

その中でも名探偵が特に恐くて嫌いなのが、カミナリである。

カミナリがゴロゴロなり始めると、名探偵はかならず 古い机の下に隠れてしまう。 その机はもう何十年も前の木の机だから、 最近のチャチな細工物と違って、 うちの家具の中でいちばん丈夫なことを 名探偵はちゃんと知っているのである。

カミナリといえば、 もちろん、イナビカリも好きではない。 とつぜん、ピカッと光るのだから、そりゃ恐ろしいったらないのだ。 名探偵はいつも、机の下で、ふるえながら肉球に冷や汗をかいているのである。

忘れもしない、何年か前の、真夜中のこと。

こともあろうに、家の中でイナビカリが光ったのである!

しかも、それは17回も連続して光ったのだ。 名探偵のみならず、猫たち全員が震え上がったのはいうまでもない。

「カミナリって、家の外で光るものじゃないの?」
「きっとカミナリが家に落ちたんだ!」

猫たちはあわてふためき、走り回った。 名探偵はもちろん、机の下にもぐってふるえていた。

しかし不思議なことに、カミナリはイナビカリが光っただけで、 ゴロゴロと落雷はとどろかなかったのである。

そのイナビカリは、それきり、光らなかった。 落雷も朝まで鳴らなかった。

ようやく差し始めた日の光に勇気をもらった猫たちは 集まって昨夜のイナビカリを話題にした。

「いったい、あれはにゃんだったんだろう?」
「どうして家の中で光ったんだろう?」

猫たちは麗尾智名探偵に調査を依頼した。 カミナリ大嫌いな名探偵は、調査なんかしたくなかったけれど、
「また今夜も光ったら恐いでしょ」と
美人猫みけに頼まれたら仕方なかった。 第一、名探偵自身、毎晩イナビカリが光ったら身が持たなかった。 昼間のうちに事件を解明しておかないと、安心して眠れない。

名探偵は調査を開始した。

するとまもなく、名探偵は妙な物を見つけた。 真っ黒い紙になにか白く写ったものである。 その妙な紙は全部で17枚もあった。

「これはいったいなんだろう?」

さすがの名探偵にも、最初はわからなかった。 しかし、光ったイナビカリは17回、その紙も17枚、・・・

「もしや、これは犯行声明文なのか!?」

だとしたら大変である。 17も数えられる猫なんて考えられないからだ。 何か恐ろしい相手、17も数を数えられるバケモノが、 家の中でイナビカリを放ったと言うことになる。

「これは大変だ!」

名探偵は、犯行声明文らしき紙を、さらによく調べた。 丹念に臭いを嗅ぎ、肉球のウラで1枚1枚調査した。

その時の調査風景は新聞にまで載った・・・かどうかは知らないが、 少なくとも写真は残っている。 これである。

猫とコピー用紙

 

1時間ほども調べただろうか。 名探偵は突然顔を上げると、ある人物、否、ニャン物を呼びつけた。

「お前のシッポをみせろ!」
「え?」

と、ここで名探偵は、語るのを中断し、ビックリ眼で聞いているハナに笑いかけました。
「・・・さてさて、ハニャちゃん、これがその時の紙だよ。」
「これ、一体なんだったの?」
「コレを見て犯人がすぐに分かったんだ。ハニャちゃんも当ててご覧。 」
「わーん、アタチにわかるかにゃあ」
「よぉく考えてご覧」
そこで、ハナも一人前に調べ始めました。
「ええと・・・」

neko

「ヒントをあげよう。誰のシッポかにゃ?」

neko

「これはアタチのシッポだしぃ・・・」

neko

「全然わかんにゃあい!ポリポリ」 
そこで、名探偵は、話の続きを語りました。

犯行声明文を鋭く見つめていた名探偵は、ついに叫んだ。
「犯人がわかったぞ!また怪猫トロ面相だな」

怪猫トロ面相はびっくりして否定した。
「えっ!?ボク、知らないよ!」

他の猫たちも、今度ばかりは否定的だった。 だって、あのトロ面相が、17も数を数えられるはずがないことを
全員が知っていたからである。

しかし、名探偵は自信たっぷりだった。
「否定したってダメだ。 このコピー用紙が動かぬ証拠だ。 おい、トロ面相、昨日はどこで寝てた。」

「あ、昨日はね、あそこ。暖かかったよ」
と、トロ面相はコピー機を指さした。 この家には仕事で使うコピー機が置いてあるのである。

「やっぱりな。 お前、スイッチを踏んだまま寝ただろ」
「スイッチって何?美味しいもの?」
「スイッチは機械についているもので、それを押すと、コピーされるのさ」
「コピーって、美味しいもの?」
「この紙がコピーだ。トロ面相のシッポとタマタマがバッチリ写っている」

名探偵は、先ほどの犯行声明文を指さした。

neko 怪猫トロ面相のシッポ

そこへ同居人が来た。
「あちゃー! トロがコピーされちゃっているじゃないか。 トロ、お前、まぶしくなかったのか? 17枚もコピーされているぞ。 今夜はコピー機のフタをきちんとおろして、電源も忘れずに切らないと。」

名探偵以外の猫たちには分からなかった。 どうしてコピー機の上でスイッチを踏みながら寝ると 家の中でイナビカリが光るのか、どう考えてもわからなかった。 もちろん、トロ面相自身もついに理解できなかった。

しかし、翌日も、その翌日も、もうイナビカリは光らなかった。 イナビカリさえ光らなければ何も問題はないので、 猫たちはたちまちこの事件を忘れてしまった。

おしまい。

 

猫  怪猫トロ面相。

猫  名探偵・麗尾智 美矢五郎

 *この麗尾智 美矢五郎シリーズは、実際にあった話を 思い切り脚色して書いています。

 

 

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