猫と赤ちゃんは仲良しこよし

妊娠しても、赤ちゃんが生まれても、愛猫を手放す必要はありません!

猫と妊婦画像

「妊婦が猫を触ると流産する」「猫からトキソプラズマが感染し、奇形児が生まれる」

こんなウワサがまことしなやかに流れているようです。

こんなことを聞けばお母さんも不安でしょうし、周囲の人々が「猫を手放せ」と強く責めることもあります。 中には泣く泣く愛猫を手放してしまった妊婦さんもいるかもしれません。

でも、このウワサ、本当なのでしょうか?

結論から先に申し上げます。 妊娠しても愛猫を手放す必要はありません!

トキソプラズマ症に感染しているかどうかの検査を受け、もし陰性(=感染していない)場合は、少しだけ注意して暮らしていただければ良いのです。 家族が増えるからと家族を手放す、そんな悲しい事をする必要はありません。

飼い猫からトキソプラズマに妊婦が感染する確率は、宝くじに当たるのと同じくらい難しいことを知ってください。

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では、どうしたらよいの?

1.トキソプラズマ検査を受ける

まず、トキソプラズマ検査を受けて下さい。産婦人科で受けられます。多分5000円でおつりが来ます。

  • もし妊娠半年以上前に感染している(注1)と出たなら、何も心配ありません。(注2)
  • もし妊娠半年以内~妊娠中に初感染したとわかった場合も、すでに感染しているのですから、いまさら愛猫をどうこうしても意味がありません。そもそも猫から感染する確率は非常に低く、あなたが愛猫から感染したかどうかもわからないのです。マタニティーブルーにならないためにも猫の癒し効果はとても期待できます、どうぞそのまま可愛がってあげて下さい。必要な医療行為については、産婦人科医にご相談ください。
  • もしあなたが陰性=感染していない場合は、妊娠中に初感染しないよう注意してください。

2.人間がトキソプラズマに初感染しないためには?

もしあなたの愛猫が、下記のいずれかに当てはまる場合は、動物病院でトキソプラズマ検査をしてください。

  • 外出自由猫である、あるいは、最近脱走した。
  • 家に来てから1ヶ月以内の猫(とくに子猫)である。
  • 食事に生肉を与えている。
  • ネズミやゴキブリなどを捕食する。

検査の結果、猫がすでに昔から感染している場合は心配ありません(注3)

猫が未感染な場合は、猫が初感染しないよう、気をつけて下さい。

  • 完全室内飼い(注4)にしましょう
  • 室内にネズミや害虫が出ないよう、必要な対策をとりましょう。
  • 生肉は与えないようにしましょう。
  • 猫トイレはその日のうちに掃除しましょう。
  • 猫トイレの掃除は夫や家族にやってもらいましょう。どうしても自分でする必要があるときはゴム手袋をはめてしましょう。

(注1)日本人の成人の20~30%がトキソプラズマに感染しているといわれています。フランス人は80%も感染しているそうです。あなたがすでに感染していても不思議ではないのです。 もしあなたがレア・ステーキが大好きな肉好き人間だったり、子供時代から猫と一緒に育った人なら、感染している可能性は高いでしょう。昔の猫は外出自由だったし、食肉の衛生状態も今より悪かったですからね。

(注2)胎児に感染する可能性があるのは、妊娠中または妊娠直前に妊婦が初感染した場合だけです。 昔から感染しているばあいは、もう抗体ができていますから、胎児に移行しません。

  

(注3)猫が感染力のあるトキソプラズマ・オーシスト(トキソプラズマの卵)を排出するのは、初感染後3日~3週間の間だけです。詳しくは下の各章をお読み下さい。

(注4)猫の完全室内飼いについては、法律でも奨励されています。
(「家庭動物等の飼養及び保管に関する基準」第6の1「ねこの所有者等は、疾病の感染防止、不慮の事故防止等ねこの健康と安全の保持の観点から、屋内飼養に努めるものとし、・・・〈以下略〉」)
ましてこれから妊娠する可能性のある女性がいる家庭では、愛猫の完全室内飼いは当然ではないでしょうか。

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ところで、トキソプラズマ症とは?

トキソプラズマ症は、トキソプラズマ原虫(注1) Toxoplasma gondi を病原体とする人畜共通感染症です。

人畜共通感染症とは、人獣共通感染症・動物由来感染症などともいわれ、人間も人間以外の動物も共通して同じ病原体に感染する可能性のある病気のことです。 ネコからヒトに感染する病気だけでなく、ヒトからネコに感染する病気も、人畜共通感染症です。

さて、トキソプラズマ原虫は、胞子虫類に属する一種の寄生虫で、顕微鏡でなければ見えないほど小さい単細胞生物です。

トキソプラズマ原虫は世界中の自然界に広く分布しています。 寒い山岳地域より、暖かくて高度が低い地域を好むようです。

トキソプラズマはヒト・ブタ・ヒツジ・ヤギ・ネズミ・ニワトリなど、200種以上の哺乳類や鳥類に寄生しますが、終宿主(注2)としているのはネコ科の動物だけです。

ネコ科以外の動物は中間宿主(注3)となります。ヒトも中間宿主です。

(注1)原虫とは、単細胞の真核生物で大きさは5~20μm。細胞核と細胞内小器官は存在しますが、細胞壁はありません。二分裂で無性増殖するものと、有性生殖期をもつものとがいます。原虫は脆弱なので体外に排出されるときは硬く厚い殻をもったシストの形態を取ります。人に病原性を示す原虫はごく一部しかいないのですが、その一つがこのトキソプラズマ原虫なのです。
(「恐怖の病原体図鑑」page9、page187を参考に、一部文章を引用させていただきました。)

(注2)終宿主とは、寄生虫の成体が最終的に寄生する宿主のことで、有性生殖が行われるのも終宿主です。

(注3)中間宿主とは、終宿主にたどりつくまでに一時的に寄生する宿主のことです。寄生虫の種類によっては、数種類の中間宿主を段階的に経てやっと終宿主にたどりつくものもいます。

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人がトキソプラズマに感染すると?

子猫

普通に健康であれば、トキソプラズマに感染しても、多くの場合、何の症状も出ません(不顕性感染)。

何らかの症状が出るのは感染した人のうち10~20%程度、リンパ節が腫れたり、インフルエンザのような症状が出たり、筋肉痛が2日~数週間続くなどで、軽微なものがほとんどです。そのため、感染してもめったに気付きません。

なお、症状が出るのは、感染後5日~数週間後です。

妊婦が感染しても、普通に健康な妊婦であれば、症状が現れない場合がほとんどで、母体に影響はありません。ただし、以下に述べるように、妊娠中に妊婦が初感染すると胎児に胎内感染する場合があり、それには注意が必要です。

免疫不全の患者や、臓器移植などのため免疫抑制剤を使用中の患者では、中枢神経系の障害、心筋炎、肺炎、脳炎などを発症する場合があります。

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妊婦がトキソプラズマに初感染すると?

妊娠6ヶ月以上前(注1)にトキソプラズマに感染した女性が妊娠した場合は、胎児に影響が出ることはありません。

妊娠中、または、妊娠直前に初感染した場合に、胎盤を通して、胎児にトキソプラズマ症が感染する場合があります(先天性トキソプラズマ症)

トキソプラズマ症は、感染時期によって、感染率や胎児にあらわれる症状が変わってきます。

「トキソプラズマの垂直感染率は妊娠初期では数%~25%くらいであるのに対して、妊娠末期では60%~70%と妊娠週数位にともなって上昇しますが、先天性トキソプラズマ顕性感染(重症感染)の危険率は妊娠初期では約60%~70%であるのに対して、妊娠末期では約10%と、妊娠初期の感染ほど重篤化すると報告されています。」(注2)

先天性トキソプラズマ症の症状としては、流産、脳症、痙攣、水頭症、頭蓋内石灰化、網脈絡膜炎(眼トキソプラズマ症)、黄疸、肝臓や脾臓の腫れ、等があります。

寄生虫博士・藤田紘一郎氏(注3)によれば、「流産や死産になる率が約20パーセント、水頭症や精神・運動機能の障害を持って生まれてくる割合は約10パーセント、残りの約70パーセントは出生時には無症状」であり、「とくに妊娠後期に感染した場合には90パーセント以上の子で出生時に異常は認められない」。

が、異常が認められなかった子も、青年期になって網脈絡膜炎などの視力障害を起こす可能性がありますから、感染の疑いがある場合は早期に検査を受け、必要に応じて治療をしておく必要があります。

適切な時期に適切な治療をしておけば、「将来、青年期になって網脈絡膜炎で苦しむようなことはない。」そうです。

このように、トキソプラズマ症は侮れない病気ですから、未感染の妊婦は初感染しないよう、十分な注意が必要です。

(注1)多くの文献は、“妊娠前に”すでに感染していれば胎児には移行しない、と書いていますが、横浜市衛生研究所ホームページでは“6ヶ月以上前では・・・胎児に影響ない”と書かれていますので、用心のためここでも“6ヶ月”と書きます。

(注2)社団法人日本産婦人科医会ホームページ内、東海臨界病院産婦人科医鈴木俊治氏著「トキソプラズマと母子感染」より引用させていただきました。

(注)藤田紘一郎著「イヌからネコから伝染るんです」page88-98参照。

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トキソプラズマの感染経路

ヒトがトキソプラズマに感染する経路はつぎの3つです。

  1. 胎内感染=母体から胎児へ感染(先天性トキソプラズマ症)
  2. シストから感染(注1)=ブタ・ウシ・ヒツジ・ニワトリなどの生肉に含まれるトキソプラズマのシストを経口摂取して
  3. オーシストから感染(注2)=ネコの糞便中に含まれるトキソプラズマのオーシストを経口摂取して、または、土中等に残っていたトキソプラズマのオーシストを経口摂取して

(注1)シストとは、保護シェルターに包まれたいわば休眠中のトキソプラズマ原虫、と思ってください。原虫はとても弱いので、シェルターにこもっていないと宿主の免疫にやられてしまうのです。

(注2)オーシストとは、トキソプラズマの卵のこと、と思っていただければだいたいイメージ的に合っています。

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飼い猫経由で感染するのは宝くじに当たると同じくらい難しい

上で、トキソプラズマの感染経路を書きました。 このうち、猫好きさんが気になるのが、「ネコの糞便中に含まれるオーシストを経口摂取して」ですよね。

では、ネコの糞便中にオーシストはどのくらい含まれているのでしょうか?

ネコがオーシストを排出するためには、まず、ネコがトキソプラズマに初感染する必要があります。

ネコが感染するには、トキソプラズマのシストが含まれている生肉を食べるか、オーシストを経口摂取する必要があるのは人間と同じです。 ネズミを捕食したり、豚肉などの生肉を常食しているネコや、野外で偶然オーシストを含んだ土を舐めてしまったネコなどが感染するということです。

ということは、完全室内飼いで、猫砂+キャットフードで育てられている飼い猫にはまず感染の機会がないということですね。

つぎに。

ネコがトキソプラズマに感染しても、オーシストを排出するのは感染後3日~3週間のあいだだけです。感染後5日~2週間まで、となっている文献もあります。

というのも、感染して2~3週間もすると、ネコの免疫が働いてトキソプラズマに対する抗体ができてしまうからです。

抗体ができてしまうと、もうトキソプラズマは有性生殖できずオーシストという卵を排出することもできません。シストというシェルターを作ってネコの体内に大人しく隠れているほかありません。

さらに、ネコは、生涯で1回しかトキソプラズマに感染しません。

上記の通り、一度感染するとネコの体内にトキソプラズマに対する抗体ができてしまうので、その後は生涯、トキソプラズマのオーシストを排出することはないのです(注1)

初感染のネコだけが、一時期オーシストを排出するのです。

つまり、子猫か、それまで外に出た経験の無いネコにほぼ限られるということになります。

ところで、

ネコがトキソプラズマに初感染すると、感染後3~5日ほどで、オーシストを糞便中に排出するようになります。 このオーシストの量は大量で、しかも土中で数ヶ月も生き続けます(18ヶ月と書いてある文献もあります)。

ただし、オーシストが感染力を持つようになるのは、排出されてから2日~5日後です。 排便後24時間は感染力はありませんから、 ネコトイレをその日の内に丁寧に掃除すれば、感染力のあるオーシストは排除できるということです。

また、ネコの感染率についてですが、

ネコのトキソプラズマ・オーシスト保有率は、東京のネコで約1パーセント。しかし不思議なことには大阪のネコはほとんど保有していない(注2)

のだそうです。

しかもこれは2000年に発行された本の中の言葉。完全室内飼いやキャットフードの普及等により、猫のトキソプラズマ感染率はどんどん低下していますから、現在の感染率はもっと低いと推定されます。

あなたの愛猫がトキソプラズマに感染しているかどうかは、動物病院で検査できます(注3)。 心配な方はあらかじめ検査されることをお勧めします。

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以上を要約すると、猫経由でトキソプラズマに感染するのは、

  1. 子猫か、今まで外に出たり生肉を食べたりしたことのない猫が、たまたまトキソプラズマに初感染し、
  2. その初感染から3日~3週間以内に出た糞便を 、
  3. 2~5日以上経てから、妊婦が口にする。

という稀な条件が揃った場合に限られるということになります。

トキソプラズマに感染するルートは、「ブタ・ウシ・ヒツジ・ニワトリなどの生肉に含まれるシストを経口摂取して」が圧倒的に多いことは、これで納得いただけたと思います(注4)

農作業やガーデニング等をする人は、土中に含まれるオーシストにも注意した方がよいでしょう(注5)

(注1)猫エイズを発症したなどで免疫機能が働かなくなった猫の場合は、再度感染する可能性はあります。

なお、猫エイズは、無症状キャリアの間は普通に健康な猫と変わりありません。エイズを発症した場合には注意、ということですので、キャリア猫だからと捨てたり差別しないでください。それより、猫のストレスを無くし発症しないようにしてあげるのが最優先です。

(注2)藤田紘一郎著「イヌからネコから伝染るんです」page97より引用。

(注3)猫のトキソプラズマ検査法で、一番簡単なのが、糞便検査でオーシストを検出する方法です。もしオーシストが検出されれば、今まさに感染直後であり危険度も最大ということですから、要注意ということになります。

確定診断は、「血清中の抗体値の測定(色素試験、血球凝集主権、ラテックス凝集試験、ELISA法)やトキソプラズマ虫害の検出によって行います。」(「イヌ+ネコ家庭動物の医学大百科」p564より引用。)

(注4)たとえば、ブタのシスト分離率は約25%もあるそうです(「イヌからネコから伝染るんです」p94)。 しかし衛生管理の進歩により、食肉のシスト保有率は低下してきています。

(注5)また、猫トイレを一工夫することで、さらに安全になるかも。たとえば、猫がトイレ砂に触らないしその上猫砂がまったく飛び散らないトイレなんでどうでしょう?
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