猫とネコとふたつの本棚猫の随筆・エッセイ(日本)>河合隼雄「猫だましい」 
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 猫だましい 」  
河合隼雄
 (かわい はやお)

新潮社・新潮文庫  
2001年発行   NDC914.6
ISBN:4101252262


【推薦:管理人】

河合隼雄氏は心理療法家。ユング派心理学についての本を始め、多数の著作がある。

私が河合氏でまっさきに思い出すのは「昔話の深層」という本だ。グリム童話をユング派心理学で見直し解説したものだ。「昔話の深層」を読んだのは二十歳前後の頃だったが、一見荒唐無稽で他愛なく見える童話に、こんなに深い意味が隠されていたのかと、当時は随分新鮮な驚きを覚えたものだった。今でこそ安っぽいテレビ番組でも、○○物語の深層心理は、なんてことを話題にしているけれど、当時はまだそういう心理学的解釈は一般化していなかった時代だったと思う。

さてこの「猫だましい」は、「昔話の深層」の猫編的な本である。
猫が出てくる書物を基にして、人間の心理を語ろうというもの。猫を扱ってはいても主役はあくまで人間の方だ。猫が何を象徴し、猫に何を託しているか。古今東西の猫本をとりあげ、あらすじを説明しながら、その裏に隠された人間心理の深層をさぐる。

嬉しいのは、河合氏が猫をマイナス的にとらえてはいない点だ。鍋島の猫騒動の話も取り上げられているが、ここでも、猫は単なる道具であり、真に恐ろしいのは人間だとされている。河合氏は「別に猫好きではない」と断っているけれど、猫好きの要素は十分におありの方なのではないかと思う。

語られる猫本は、「牡猫ムル」、「長靴をはいた猫」、「空飛び猫」、「100万回生きたねこ」、「トマシーナ」、「猫と庄造と二人の女」、「綿の国星」、「牝猫」などなど。いずれも有名な本ばかりなので、猫本フリークの方々なら多分ほとんどご存じだろう。その他、日本昔話の中の猫や、鍋島の猫騒動など、幅広く取り上げられている。こんなに多くの猫本をご存じだというだけでも、河合氏は実は猫好きなのではないかと疑ってしまうのだ。

ええと、ただひとつ。
河合氏はこの本の中で「漱石はホフマンより大分後の時代だが、彼は牡猫ムルのことを全然知らなかった」と書いているけれど、それはちょっと違う。「吾輩は猫である」の最終章の最後の方に、1回だけ「カーテル・ムル」の名前が出てくるからだ。だから知らなかったはずはない。しかし内容まで知っていたかどうかはわからない。

「猫」は「ムル」を参考に書かれたという人もいるようだが、私は違うと思う。多分、多くの人達が推測しているように、「猫」を書き始めた当初は漱石は「ムル」を全然知らなかった。「猫」が有名になるにつれ、「ムル」との類似点を指摘され、それを潔癖な漱石が嫌い、結果、吾輩君を溺れさせ「猫」を終わらせてしまった、というのが真相ではないかと。

巻末に大島弓子さんの感想マンガが付いています。

(2004.02.04)
★面白さ4:お勧め度3

 

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猫の随筆・エッセイ(日本)
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