猫とネコとふたつの本棚猫の小説(日本)>保坂和志「猫に時間の流れる」 
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猫に時間の流れる」  
保坂和志
 (ほさか かずし)

中公文庫   
1994年    NDC:913.6
新潮文庫ISBN: 410144921X
登場ニャン物=クロシロ、チイチイ、パキ、チョロ、サスケ、ピルル(以上「猫に時間の流れる」)
ガッちゃん、ファー

 

【推薦:管理人】

表題の「猫に時間の流れる」と「ナイトキャップ」の2編からなる。

「猫に時間の流れる」は、どこまでも猫を中心に置いた短編。

“ぼく”は古いマンションの3階に住んでいて、両隣がそれぞれ猫を飼っている。
そこへ野良猫の雄が毎日現れるようになる。
小説で一番大きな存在感をしめすのがこのクロシロと呼ばれる野良猫なのである。

クロシロは毎日毎日、廊下にマーキングしていく。
マンションの住民達は毎日毎日、そのマーキングを拭いて回る。
猫嫌いには絶対に我慢できないような状況だが、3人とも猫好きだから、実に淡々と、当然のように、おしっこの後を拭いて歩く。
そして、夕方になると、それぞれの飼い猫を連れて屋上にあがり、のんびりと井戸端会議にふける。
なんとも穏やかで豊かな精神生活である。

が、・・・クロシロは野良猫ならではの不幸に見舞われる。
住民達は、そんなクロシロをただ見守るほかない。

しんみりとした小説だ。
クロシロという1匹の猫の存在感の大きさ。
その堂々とした生き方が胸を打つ。
巻尾の解説マンガの中で、大島弓子さんがクロシロのことを
「なんだか小説が終わってもずっとあとをついて行きたくなる猫」
と書いているが、まさにそんな感じの猫だ。
(解説者大島弓子さんは漫画家なので解説もマンガなのです)


「ナイトキャップ」は人間の方に視点を置いた小説である。
ここに登場する人物もみな飄々とした個性的な人物ばかり。
モデルをやっている女性のために飼い猫をシャンプーしてあげたり、餌付けされている猫達に不妊手術を施すために捕獲しにでかけたり、猫は重要な脇役として登場するが、「猫に時間の流れる」のクロシロのような印象的な子は出てこない。
しかし少し前の日本にはこういう呑気な生活があったのだと郷愁を誘うような短編である。

(2003.7.15)
★面白さ4:お勧め度5

【参考HP】
保坂和志公式ホームページ

【楽天ブックス】→猫に時間の流れる
【紀伊國屋書店】→猫に時間の流れる

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