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「 映画:ベイブ 」

1996年 オーストラリア
キャスト:ジェームズ・クロムウェル、マグダ・ズバンスキー、クリスティン・キャバノー, ミリアム・マーゴリーズ, ダニー・マン、他
監督:クリス・ヌーナン
上映時間:92分
登場動物=ダッチェス(猫)、ベイブ(子豚)、レックスとフライ(牧羊犬)、フェルディナンド(アヒル)、マー(ヒツジ)、その他多数
"Babe"

 

 

【推薦:管理人】

ベイブは子豚。

お祭りの「子豚の体重当てクイズ」の賞品として出されていたのを、農場主のホゲット氏が当てた。

ホゲット氏の農場では、豚こそ飼育していなかったものの、多くの動物達がいた。牧羊犬。猫。アヒル。ニワトリ。ヤギ。馬。そして、たくさんの羊たち。

犬のフライ母さんは、ちょうど子犬たちを育てている最中だった。孤児のベイブを気の毒に思い、我が子と一緒に子豚を育てる。

クリスマス前のある日、ベイブは家畜泥棒に気付き、犬たちやホゲット氏に知らせる。ホゲット氏はベイブを褒め、その後、ベイブは犬たちと一緒に羊の番をするようになる。

しかし、誇り高き牧羊犬のレックスはそれが気に入らない。妻のフライと喧嘩して怪我をさせ、止めに来たホゲット氏まで誤って噛んでしまう。レックスは縄に繋がれる。

レックスもフライも当分、牧羊犬として働けなくなってしまったので、ホゲット氏は子豚のベイブに代役をやらせてみる。ベイブは牧羊犬と同じくらいか、それ以上に、羊の扱いがうまかった。

それを見て、ホゲット氏は、とんでもない事を思いつく。なんと牧羊犬大会にベイブをエントリーさせようというのだ。

 

第68回アカデミー賞で作品賞、監督賞など7部門でノミネート、CGやアニマトロニクスなどの特殊効果が評価され、アカデミー視覚効果賞を受賞した名作。

主役は、あくまで動物だち。CGで動物達を口ぱくさせ、まるで本当にしゃべっているような効果が、上映当初は珍しく大人気だった。舞台の農場は、おとぎ話から抜け出したような、かわいい農家や馬小屋。青く広い牧場を動物達が駆けまわる。一見、子供用のファンタジーコメディ。

が、よくみればこの映画、そんな甘っちょろい内容ではない。それどころか、モリエール張りの風刺満載な、大人にこそ見てほしい映画なのである。

【閲覧注意!以下、ネタバレ含む】

↓   ↓   ↓   ↓   ↓

ベイブが産まれたのは近代的な養豚場だった。そこでは、子豚たちはごく幼くして母豚から引き離され、金属製の自動哺乳器で育てられる。

ブタに敬意を払う者など誰ひとりとしていなかった。肉につぶされて人間に食われる、ただそれだけの為にブタ達は存在していた。

ベイブが助かったのは偶然にすぎなかった。ホゲット氏の農場に来たのも偶然にすぎなかった。

ベイブは、農場に来てすぐに、ブタが差別されてることに気付く。扱いがまるで違う。

人間の家の中に入ってよいのは、犬と猫だけ。人間と一緒に「仕事」にでかけるのも、犬だけ。豚はいつもお外でお留守番。「どうして?」と尋ねるベイブに、フライ母さんはただ「それが世の中というものなの」としか言えない。

差別は、人間と動物の間だけではなかった。犬は他の動物達を馬鹿にしていた。フライ母さんは、子犬たちに、ヒツジもブタも大馬鹿だ、自分たち犬はヒツジだちより優れた存在なのだと教育する。

しかし、特権階級の犬たちだって、人間の下位に位置する動物にすぎなかった。フライの子犬たちは、少し成長するや否や、よそへ貰われていったが、フライもレックスもそれを黙って見つめるしかなかった。

アヒルのフェルディナンドがヒントをくれた。動物は、何らかの形で、人間の役に立たなきゃ「用無し」なのだ。だからフェルディナンドは、アヒルなのに、雄鶏より早く起きて朝を告げている。人間に「用無し」と見なされたくないから。「用無し」と見なされたら、肉につぶされて食べられてしまうだけだから。

ホゲット夫婦は、最初、ベイブを太らせて御馳走に食べることしか考えていなかった。ホゲット氏がベイブの存在に注目し始めたのは、ベイブが人の役に立ったからである。そのホゲット氏でさえ、しかし、ささいな誤解からベイブを殺そうとしたこともある。

「役立たず」は「用無し」。役立たずな動物が生き続けることは許されない。

なのに人間はどうだろう!?たとえばホゲット氏の孫たち。キーキー大声で泣きわめき、何かの役に立つどころか、我儘を言っては大人たちを困らせるだけの存在として描かれている。なのに大切に愛されている。

ベイブたち動物は、哀しい目で、それを見守るしかないのである。

牧羊犬にかわって、羊番をすることになったベイブ。最初は、羊たちがいう事を聞いてくれず、戸惑うが、一頭の老ヒツジが、ベイブにあることを教える。頭ごなしに命令しちゃだめ。丁重にお願いするのよ。ベイブが教わった通り、誠実お願いすると、羊たちもベイブのお願いに答えてくれた。

この映画のテーマ。どんな命も、差別してはいけない。さげすんではいけない。対等な立場で、相手に敬意を表しなさい。あなたが相手を敬って初めて、あなたも敬われるのです。

で。この映画の中で猫はどう扱われているかというと。

猫は、犬とともに、人間側に近い存在として描かれているのである。犬が仕事のパートナーなら、猫は子供みたいな存在というべきか。猫はホゲット夫人に可愛がられ、ふだんは家の中でのうのうと暮らしている。

猫ダッチェスは、ベイブを引っ掻いた罰に、雨の中に出されてしまう。それを恨んでベイブに「ひどいこと」をいう。

「人間はブタを食べるのよ!」

ベイブはショックで家出してしまう。

だけど・・・

話の流れでは、あたかも猫が性悪のようにみえるけど、それも元はといえば、ベイブが悪い。まだ室内に入ることを許されていなかったころ、ベイブとアヒルは家宅侵入して、新しい目覚まし時計を盗み、室内をめちゃくちゃにし、猫をペンキまみれにし、謝らずに遁走していたのだ。これでは猫が怒って当然。しかも猫が言ったことは真実。

「豚は人間に食べられるために存在する」

悪いのは、やっぱり、人間なのである。

ところで、主役をつとめたジェームス・クロムウェル氏。寡黙な老農夫役を、実に味わい深く演じていて、まさに適役だった。彼は「この映画と真剣に取り組むにはベジタリアンになる必要がある」と考え、以来、肉食ばかりか、卵や乳製品等も摂取しない、厳格なベジタリアン(ヴィーガン)になったそうだ。

彼だけでない。この映画の影響でベジタリアンに転向した人が、とくに若年層に多く出たという。

日本ではどうも、他の動物ものと一列に「お子ちゃま映画」扱いされる傾向があるようだけれど、そんなちゃちい映画ではないのである。むしろ、愛くるしい動物達の背後に黒々と迫る残酷な運命に震えながら見ていただきたい映画だと思う。

(2015.6.6.)

★面白さ4:猫度1:お勧め度5

*続編:「ベイブ都会へ行く」 

ベイブ

*本の中身の画像は、著作権法に配慮し、あえてボカシを入れています。ご理解ください。

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